6章2節:離婚を思いとどまった理由と愛情のかたち

離婚を思いとどまった理由 ― 愛情とは、家族とは

離婚については何度も考えました。台風の中を歩くような毎日に、心身ともに擦り切れる寸前だったからです。

一方で、時間をかければ、生活面などいろいろなことが整って、いつか落ち着いて暮らせるだろうという思いが消えませんでした。だから、私はひたすら仕事に邁進したのです。当時の私にはそうすることしかできなかったのです。

また、私自身、平穏とはいえない家庭で育ったにも関わらず、大人になってから出会った人たちによい影響を受けてきました。

私は、自身が配偶者にとってそんな存在でありたいと思っていました。人生は生まれた環境だけでは決まらない。自分自身で生き直すことができるということを、一緒に体現したかったのです。

振り回されながら暮らすうちに、配偶者の行動原理には両親の存在と信仰が深く影響していることを確信するようになっていました。私は配偶者に自立してほしかったのです。

配偶者への情を捨てることもできませんでした。これも一種の愛情なのかもしれません。結婚する時、言葉にできない何かを心の深いところで共有している感覚はありました。今思うと、あれは心の傷だったのかもしれません。

他愛もない話ですが、配偶者はあるバンドの大ファンなのです。彼らの話をする時は、明るく希望に満ちた表情になります。その一面を見るたびに、「この人は大丈夫だろう」と思うのです。

休職初日のことです。私が自宅で呆然として過ごしている際、「この曲を聴いてみて」といって、LINEでそのバンドのあるライブ動画を送ってきてくれたことがありました。そうやって私に寄り添おうとしてくれました。

私たちの関係は、私の退職という代償と引き換えに、壊れる寸前でようやく形を変えました。

人が人を愛するとは、必ずしも特別な何かをすることではなく、ただ共に過ごし、時には立ち止まって振り返り、受け止めることなのかもしれないと今では思います。

役所での離婚届に関するエピソード ― 守衛室で始まり、守衛室で終わる?

離婚といえば、一つ忘れられないエピソードがあります。

思い詰めた気持ちで役所へ離婚届をもらいに行った時のことです。入り口付近で来庁者を適切な窓口に案内する係の人がいました。

「離婚届をもらいにきました」と伝えたとき、「離婚届は◯◯番の窓口です」と大きな声で返事をされてしまったのです。

その係の人に悪気はなかったと思いますが、私は恥ずかしさのあまり、逃げるようにその場を立ち去りました。

一旦、役所の建物から出たあと、「守衛室で離婚届をもらえるかもしれない」という考えがふと頭をよぎりました。なぜなら、十数年前、入籍した日は休日だったため、婚姻届を守衛室に提出したことを思い出したからです。

守衛室で尋ねると「△△階の◯◯番窓口でもらえますよ」と同じことを言われましたが、「人目が気になります」と伝えたところ、無事その場でもらうことができました。

そして親切にも、建物の正面出口ではなく、職員用の通用口から出るよう案内してくれたのです。

次章のテーマ ― 配偶者の親と信仰

配偶者の性質の裏には、親と信仰の存在が深く関わっていたと思います。そのことについて、次の章で詳しく書きたいと思います。