4章2節:家族や遺伝を決定要因としない考え方と姿勢

「菜穂樹の反骨精神が好きよ」 ― 元上司が言ってくれたこと

直近の勤務先で組織再編が行われる前、欧州本社に勤務するミランダ(仮名)が私の直属の上司でした。彼女は私の反骨精神が好きだとよく言ってくれました。

彼女も自分自身の哲学を強く持っている人でした。といっても、特別な思想ではありません。恐らく、多国籍な環境で求められる当たり前の心構えを、私と常に共有しようと努めていたのです。

彼女はよく言っていました。

「言われたことだけをやっていては不十分。言われてないことでもどんどんやる必要がある」

「やるなと言われたことでも、菜穂樹が日本事業のために必要と思えば、はっきりとそう主張して実行するべきだ」

私とミランダは一枚岩でした。前述の明英さんとも重なります。

誰しも、人生のどこかで、自分を認めてくれた人に出会っているのではないでしょうか。その記憶を丁寧に掘り起こすことが、心を立て直す大きな力になると思います。

今後もまたこのような良い出会いがあるかもしれません。その出会いを意味あるものにできるかどうかは、私の人生に臨む姿勢次第だろうと思っています。

家族や遺伝で人生は決まらない ― 自分で選び直せばいい

3章2節でも少し触れましたが、生きづらさの根本原因を探るため、休養期間中に多くの本を読みました。

私は精神科医でも心理学者でもないので詳しくは紹介できませんが、「家族や遺伝は影響要因ではあるが、決定要因ではない」という考えに触れたとき、目を開かれる思いがしました。

いつの間にか、人生の半分以上は、親に与えられたものではなく、私自身の選択で形づくられてきたものになりました。その間、本章で述べた通り、世代も、社会的立場も、文化も言語も違う赤の他人に、生き方の上で大きな影響を受けてきたのです。

もし今、私が人生の壁に直面しているのなら、その原因は必ずしも生まれ育った環境にあるのではなく、今を生きる大人としての私自身の力量によるものではないでしょうか。

家族によって大きな重荷を背負ったことは事実だと思います。しかし、その対処方法や今後の生き方は、私が自分で決めることができるのではないでしょうか。

勇気も持つこと ― 通院して出会った言葉

通院中、医師やカウンセラーから示唆に富む言葉を多く聞きました。最も印象に残っているのが「勇気」に関する話です。

この概念は「言うは易く行うは難し」の典型例かもしれません。

自分の意思で自由に生きようとすれば、責任は自身に降りかかります。多くの人が、怖くて一歩を踏み出せないかもしれません。意識的かどうかに関わらず、与えられた環境に留まろうとすることは自然な人間心理のような気がします。

私は人生の大きな壁にぶつかった時、幸運なことに、その根本原因に気づくことができました。そして、勇気を持って過去と現在を受け入れて一歩を踏み出せば、新たな人生を生きられるかもしれないと思い至ったのです。

変わり始めた家族 ― 内省的になる配偶者

私は長い間、配偶者との価値観の違いに悩み続けて来ました。

私が過去を受け入れて、新たな人生を生き始めて以来、配偶者の言動にも変化の兆しが見え始めました。以前よりも内省的になり、自身の人生を振り返り始めたのです。

そして、やがて配偶者自身の中で大きな決断をすることになります。

次章のテーマ ― 配偶者について

次章から配偶者とその親族について触れていきます。